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「睡魔との戦い」

「睡魔との戦い」


スチュワーデスの仕事は常に睡魔との戦いだ。

国内線乗務時は、朝5時台に出社しなければいけないこともあるし、国際線では徹夜のフライトも多い。 時差ボケのために「疲れているのに眠れない」なんてことも日常茶飯事だ。

新人の頃、時差調整が上手くできず、ホノルルのホテルで眠れない夜を悶々と過ごしたことがあった。部屋を真っ暗にして、眠りにつこうとするのだが、何匹羊を数えても寝付けない。「明日は仕事では満席のジャンボ機で9時間ものフライトをこなさなければいけない」と考えれば考えるほどあせるばかり。ついには明け方になってしまい、それでも少しでも眠ろうと誘眠剤に手を出した後、ぱたりと記憶が途絶えた。

けたたましい電話の音で起こされた時には、一体全体何が起こったかさっぱり分からず、今自分が何処にいるのかも分からなかった。
「一体全体どうしたの? もう皆、空港行きのバスに乗込むところよ!」
先輩のかん高い声が電話口から聞こえてきた。なんと私は目覚ましベルの音も聞こえず、フロントからのモーニングコールもブッちぎり、死んだように寝ていたのだ。
スチュワーデスが飛行機に乗り遅れるなんて前代未聞。とにかく顔を洗い、髪の毛をまとめ、荷物をフライトバックに押し込むと脱兎のごとく部屋を後にした。タクシーを捕まえ、空港に到着し九死に一生を得たが、今思い出しても背中に冷や汗が伝う出来事だった。

さらに私には機内でのレスト (休憩) の時間でも寝過ごした過去がある。
長時間のフライトを乗務すると、屋根裏部屋のような狭い場所で、横になって交代で2時間ほど仮眠がとれる。その日は満席のニューヨーク線で、私達の体内時計は真夜中だというのに、太陽の光がさんさんと降り注ぐ機内では、エコノミークラスのお客さまは、飲めや歌え(?)のおおはしゃぎであった。食事のサービスをし、免税品の販売を終え、待ちに待ったレストの時間は至福のひととき。横になったと同時に、気を失ったかのように寝てしまった。

いつもは割り当てられたレストが終わるころになると、誰かしらがごそごそと起きだし、その気配に目覚めるものだが、その日は珍しく誰も起きることがなかった。しびれをきらした次のレストのクルー(乗務員)が、私達を起こしに来たときには、すでに次のレスト時間をかなり割り込んでいた。}
「どうもレストルームにサリンがまかれていたみたいで…」
と冗談混じりに苦しい言い訳をしたが、注がれた視線は冷ややかであった。(-_-;)s

by むーち