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お客さ〜ん、終点だよ！
今日は、ヨーロッパからの帰り便。
ボスは、ヨーロッパからは夜間フライトなので食事のサービスが終われば、お客さんも寝てしまって、太平洋線より楽って言ってたワン。
機内のサービスも終わり、ボスもギャレー（台所）で食事の時間。
これが、唯一の至福の時（？）
ポーン！
コールボタンが鳴ったので，ボスは食事を中断してお客様のところに行くと、
「日本酒」というリクエスト。
（この、お客さん結構出来上がっているみたい）
ギャレーに戻って、他のクルーに
「25のHの人、何杯目？」と聞いてみると、
「食事の時にワインを結構飲んで、水割り、日本酒も3本目飲んでいま〜す」 との答え。
「もう、すでに出来上がっているから、もう日本酒は出さないでね。これから出すときは、薄い水割りにして。この間も、アメリカに入国するとき、酔っ払いすぎてホイルチェアーリクエスト（車椅子）で、挙句のはてに入国拒否された人がいたから・・・。外国に入国するなら、ちょっと注意しやすいけど、日本に帰るからお客さんにあまり強くもいえないし・・・・、少し水割りで様子を見ましょう。」
と言ってボスは、水割りを持ってお客さんの所に行ってしまった。
（頼まれた物と、違う物を持って行って大丈夫かなー）
水割りを持って行くと、お客様はすでに、寝ていた。
（このまま放っておくと、起きて、まだ持ってこないと文句が出るし、仕方ない、起こしてみるか。）
「お客様・・・、お客様・・・、すいません。あいにく日本酒は終わってしまいましたので、水割りをお持ちしましたが、いかがですか」
「う〜ん。いいよ」 と彼は寝ぼけ眼で答えて、また寝てしまった。
これで、そのまま寝てくれればいいのになー、なんて思っていたら、また30分後、ポーン・・とコールボタン。また、また同じところ。
行って見るとライトはついているのに、本人は寝ている。
（完全に酔ってる、だけど声だけかけよう）
「お呼びでございますか」
「うん、水割り」 と言ってグラスを差し出してくる。
（本当に大丈夫かな。 ）と心配しながら、１：９のような水割りを作って持って行くと、また寝ていた。
（まったくもう。寝るか飲むかはっきりしてくれー）
と思いながら声をかけて、
「お待たせいたしました。ところでお客様・・、お強いですね」 とちょっといやみ交じりで言ったら、
「機内では、一睡も出来ないから、何時もずーと飲んでいるんだよ」との事。
（寝れないといいながら、寝ているワン）
この繰り返しを５〜６回やったかな。 もうこれ以上、リクエストしたら飲みすぎシールを貼って断っちゃうぞと思っていると、到着２時間前になり、２回目の食事の準備をし始める時間。
お客様も起きだし、機内もにわかに活気づき始めた。
あのお客様はというと、グーグーいびきをかいて大の字状態になって寝ている。
（どうみても、駅の構内のベンチで酔っ払って寝ている人にしか見えない。誰だ、寝れないって騒いでいたのは）
彼は食事のサービス中はもちろん、到着前の準備前になっても起きない。 無理やり起こして、椅子を水平に戻して、ベルトをしてもらって無事ランディング。
お客さんの降機の時も、例のお客様はその騒ぎの中も寝っぱなし。
そのそばを通るお客様は、彼を横目に見ながら、まるで終電で酔っ払って乗り過ごした人を、見て見ぬふりして降りて行く時と同じようにして、みんな降りて行ってしまった。
（さーて、あのお客さん、起こして歩けるか心配だ。お客さ〜ん、終点だよ！って言ったら、起きるかな）
なんて思いながら反対側から他のお客様を見送りながら見ていた。その時の事、彼の座席の４つ後ろの人が彼を起こして、降りる準備の世話をしはじめた。
（なんだ、連れがいたのか）
と思いながら様子を伺っていたら、シートポケットの物や荷物など身の回りを全てしてあげて、彼と一緒に降りていった。
彼はといえば、頭をぼさぼさにしてまだ半起きの状態で、今までの事は忘れたかのよう、よろよろと降りていった。
やれやれ無事終了。
でもあの２人の関係を見てみると、普通なら、近くの席にすわるのに、連れが座らないところをみると、何時も飲みすぎて恥ずかしい思いをするか、行きのフライトで恥ずかしい思いをしたに違いない。
だから、日本到着までは他人のふりをしたかったに違いない、な〜んて何時もの癖で人のバックグラウンドを憶測したりして・・・・・
それにしても、「お客さん、終電だよ！」の酔っ払い状態は、世界を羽ばたくビジネスマンとして、日本人としては恥ずかしいから、外国ではやらないで欲しいワン！
By 怪獣ボスデスモンの飼い犬 レイ
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