トップ > e-デス ちゃんねる > 愛すべきお客様 > 流れる草履

流れる草履

流れる草履


仲良しの先輩が国内線を乗務したときのこと ある品の良い大島紬なんか着込んだおばあちゃんが乗ってきた。
一人だったので 心配だろうと声をかけてあげたところ、とても感じの良い素敵なおばあちゃまだったそうだ。
飛行機に乗るのは3回目とかで 離陸前にはもちろんシートベルトを 閉めてあげた。
そして離陸。それはジャンボではなく小さな飛行機だったので離陸角度が大きく、結構重力が感じられた。
そのとき前方より何かがさーっと走ってくるではないか。
「 なんだろうー?」とびっくりしながら見ていたら自分の足元まで それは流れてきたのであった。
「 おおおー」と見てみると、それは先ほどのおばあちゃまの草履ではないか。 しかも2足ともそろったままで・・・。
そして前を見るとおばあちゃまは不安そうに先輩のほうを見ていたそうだ。
ベルトサインが消えてまもなくしてから、 おかしくておかしくて笑いをこらえながらその草履を持っておばあちゃまの ところに行くと、その方はきちんと正座していたそうな。 そりゃあ草履は流れるんだなあーと思い納得して 笑いながらお返ししたそうです。 そして
「着陸のときは正座しないでくださいねー」
と付け加えて とてもかわいいおばあちゃまのお話。


by お月見雪うさぎ