不思議なスッチー
お客様にもいろいろ面白い人がいるけれど、スッチーだって負けてはいない。
そりゃ何千人もいるから、真面目な人、ユニークな人、個性的な人、様々だけれど、 ある日香港日帰りをご一緒したチーフパーサーはひときわ変わっていた。
とにかく朝からハイテンション、日帰りでどんよりしている私たちに、明るく「よろしくぅ！」を連発していた。
ま、暗いよりはいいけどねえ。 私たちが忙しく搭乗前の準備をしているときには、「うわあ、今日リボン忘れちゃった、どうしよう！」と、これまた忙しく機内を飛び回っていた。髪型はアップにしていたけど、いつもリボンなんて付けてたんだっていうほど何てことない髪型だ。
いざサービスの真っ最中、本当に真っ最中、彼女は担当であるはずのファーストクラスから猛スピードで飛び出し、キャビンを駆け抜けていった。何か物を取りに行ったのかな？と思ったが、いっこうに戻ってくる様子はない。見るとエコノミークラスにいて、みんなが食事をせっせと出しているときに、横から飲み物のカップを下げたり、お客様に笑いかけたりしている。手伝っているというよりは邪魔しているとしか思えない。それにファーストクラスにはいなくていいのかしら？
私がビジネスクラスのサービスを終えて、ファーストクラスの免税品を伺っているときに彼女は帰ってきた。ある年配の男性客がスカーフを見ながら、「いやあ、あちこちに娘がいるから選ぶの大変だよ。」と冗談で言うのに、「きゃは、きゃは。」と答えている。うわあ、お客様にな、なんてことを・・・。どうなっちゃうんだろう、ととてもヒヤヒヤしたが、幸いそのお客様はものすごくいい方だった。スカーフを５枚も買っていただいて、なごやかにその場は終わった。
長かった日帰りも終わり、家に帰るのにリムジンバスに乗ると、彼女もやって来て私の４列前に座った。私は眠ろうとしたが、その日はなんだか眠れなかった。ふと車内を見渡すと、ビ、ビックリ。彼女は白いとんがり帽子のようなのを顔中にかぶっていた。うす暗い車内に白く浮かび上がっているそれは非常に恐ろしく、まるで「13日の金曜日」のようなオカルトチックであった。私はその物の正体をなんとかつきとめたくて、目をこらしてじぃーっと見つめた。そして、ついにわかった！それは、エコノミークラスのヘッドカバーをガムテープでつなげたものだった。な、なんでそんなものを？
寝るためにかぶっているのかな？後ろからしか見てないけど、前には鼻と口のところに穴があいてるんだろうか？なんて想像しちゃった。リムジンバスが箱崎に着くと、彼女はその帽子をシュポっと取って、さっさと降りていった。
興奮した私は、家に帰ってみんなにメールをしまくったのであった。こういう人は、話題になって結構楽しかったりして・・・。
機内で暇だったら、よく観察してみよう。面白いスッチーに出会えるかも？
by ほろ酔いくま
