貴重なご意見

貴重なご意見

冬場のフライトは思いがけない所でよく揺れる。
夏とは気流が違うので無理はないけれでも飛行機の中で働く身としてはかなり神経を使う。
食事のサービスを行っているときなんかは本当に困ってしまう。
タイミングよく温まった食事を提供したいのに始まって少ししてから揺れ始め、ベルトサインがついてしまって、もうしばらくは中断。
もう食べ始まったお客さまは良いけど、お腹をすかせてにおいばかりかがされて、まだ食べられない人たちは悲惨。
気持ちはわかるけど、いらいらしてきて最後には爆発する事になる。

そして慌ててサービスを再開すると今度はもう食べ終わった人たちが「早くさげろー」と騒ぎ出す。
全くこちらも「やってられないよー」と思いながらも笑顔で対応していくときの辛さはない。
時間も、倍以上かかってへとへとになってしまう。
まあ食事のときは仕方ないとしても、ベルトサインがついたときのトイレの使用は結構もめる事がある。
ベルトサインは警告でもあるから、怪我をさせないために遵守しなければいけないけど、「お客様はあまりたいした事ではない」と思ってるいる人も少なくはない。

先日ベルトサインが点灯し、機内の一番後ろにいた私は後方のトイレを確認した所、一人入っている事が分かった。
すかさず、ノックしてでてきてもらうように促したら、あわてて中年男性が飛び出してきて、何とか席に座ってくれたのでこちらもほっとしていた。
しばらくして揺れもおさまり、トイレ掃除をしていたら、先ほどの男性が「ちょっとさあ、意見があるんだけどなあ。」と言ってきた。
私は慌ててトイレから出させた事を怒ってるのかなあと神妙に聞いていたら、彼はまじめ顔でこう言った。
｢トイレの便器にもシートベルトつけてくれないかなあ。そうすれば、揺れててもゆっくり入れるのにさあ。俺なんか途中でなかなか止まらないんだよねー。このことよーく機長さんに朝礼のときに言っておいてね。｣と言い残して戻っていかれた。
私はうーんなかなかグッドアイデアではあるけれども、ものすごい揺れのときは便器の中身は逆流して飛び出してくるんだと言う事も言えず、朝礼と言う言葉の新鮮さに感動していた。
でももちろんその素朴なご意見に対して、私は「そうですね。本当に貴重なご意見有難うございました。」と深々と頭を下げたのでした。

皆さん色々と考えるんだなあと感動した。
でもタービュランスの時はくれぐれもご注意を。
シートベルトをしていないと天井まで飛ばされる事もあると言う事をお忘れなく。

By　しゃっきり柊