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飛行機に宿るお化け

 
 
  飛行機に宿るお化け  
 
むかしむかし、まだDC8シリーズが主流で飛んでいた頃は情緒があったんですねぇ。
ハイテクの飛行機とはいえ、まだまだ飛行機に乗るのも限られた人で、飛行機に乗る事が大変な事だった頃は、飛行機も今のように忙しく飛び回っていませんでした。
どこかの国に降り立つと次の出発まで暫く逗留して・・・といった具合に。
ですからいろんなものを運んでいる飛行機も「余裕」というか「感情」を持ち合わせていたと言えるような・・・。


荷物の中には、不慮の事故にあって里帰りするご遺体もありました。
その頃の映画はプロジェクターで上映していました。
暫くスイッチを押していないと止まってしまうのでよく先輩にしっかり押しているように叱られたものです。


その映画が突然始まってしまうという出来事がありました。
誰もスイッチを押した人はいません。
そうこうしていると、今度はコールライトが一斉にピンピンあちこちでつきだしました。
アナログの時代です、静電気か何かの具合で点灯するという説明もつきますが、私には寂しかった霊が存在を知らせているような、そんな気がしてなりませんでした。


整備の人に聞いたというこんな話もあります。
羽田に逗留している飛行機の一番後ろのギャレイ(厨房)がほのかに明るく、誰もいないはずなのに・・・と思い行ってみると、スチュワーデスが一所懸命自分の靴を探しているのです。
事故にあったスチュワーデスのお化けだったのだろうといううわさでした。


そんな時代はもう終わってしまったなぁと、逗留時間も数時間で又飛び出していく忙しい飛行機を見ていると少しかわいそうにも思えてきます。

しかし、今ごろになって、コールライトが消しても消してもついてしまうことが起きました。
久しぶりに「感情」を持った飛行機に会った気がしました。
もちろんすぐ直してもらいました。
何が原因なのか、そんな事を聞く無粋な事はせず、昔を懐かしく思いました。


そういえば数年前、食事を終えたお客様が、突然意識をなくされ、心肺停止状態になりました。
乗務員の必死の蘇生処置もむなしく、ダイバートした空港で心停止を宣言する事になったのですが、そのご遺体をそのまま日本までお乗せすることになり、私たちはどこに横たわせるか悩みました。
そんな必要は全くなかったのですが。
亡くなった人は貨物だったのです。
言葉は交わしませんが、居合わせた私たちは無常を感じあいました。


便利になった飛行機ですが、環境は決して通常のものではありません、むしろ最悪でしょう。
くれぐれも体調万全でお乗りになることをお願いします。
 
By クオリア